Web上の反響で論文の影響度を示す「altmetrics(オルトメトリクス)」の見方と目安

研究評価指標の多くは論文の引用件数を基準とするため、評価が出るまでに長い期間が必要でした。altmetricsは即時性があり従来の指標を補完する新しい指標として期待されています。その特徴を詳しく説明します。

論文の影響度がすぐにわかるaltmetrics(オルトメトリクス)とは?

altmetricsは、個々の論文などについてWeb上のソーシャルメディアやニュースサイトの反応をもとに影響度を測る指標です。「代替の」「伝統(主流)から外れた」といった意味を持つalternativeと「評価指標」を意味するmetricsを合わせた造語で、その名の通り、altmetricsは従来の被引用数に基づいて論文やジャーナルを評価する指標に代わるまったく新しい指標といえます。

従来の指標を補完する2つの特性

論文やジャーナルが学術界にもたらす影響力を測るには、被引用数を調べるのが最も確実な方法であり、従来の代表的な指標であるインパクトファクターやh-indexなどは主にこの被引用数を基準にしていました。しかし、公開された論文が引用されるまでには少なくとも1年程度の時間を要するため、論文公開直後に指標がわからないというタイムラグが問題でした。この従来の指標がカバーできない部分を補う「即時性」がaltmetricsの大きな利点です。

また、altmetricsには従来の指標にはない学術コミュニティ以外の反応が含まれており、「社会性」を示す点も特徴です。これまでは対象となっていなかった「社会的なインパクト」についても評価できるようになりました。多様性に富むソーシャルメディアを指標の根拠としているため、収集する情報の範囲や収集スピードにおいて、従来の指標を補完する存在といえます。

altmetricsの計算法

altmetricsが指標の根拠としているのは、Web上に現れる反応で、そこにはFacebookやTwitterなどのSNSのほか、Newsやブログ、Wikipedia、YouTubeなどが含まれます。Web上でaltmetricsを調べて提供するサービスは、すでに複数の会社や団体で行われており、最も主流なのがAltmetric.com の指標です。Nature、AAAS、Springerといった世界中の大手出版社をはじめ多くの研究機関や大学でもAltmetric.com の提供する指標が採用されています。

altmetricsの計算方法は、提供する会社や団体によって異なりますが、ここではAltmetric.comの計算方法について紹介します。Altmetric.comでは、論文が取り上げられたサイトの種類ごとに独自の基準による重み付けをし、それを数値化しています。それぞれの指数はAltmetric.comのホームページで公開されています。以下に主なものを挙げます。

News:8
ブログ:5
Wikipedia:3
Twitter(ツイートとリツイート):1
Facebook:0.25
YouTube:0.25

ニュースやソーシャルメディア以外には、以下のようなサイトも含みます。
Policy Documents(ソースを含む):3
特許:3
ピア・レビュー(Publons、Pubpeer):1
シラバス:1
F1000:1

このほかにも世界中である程度の支持を得ているサイトについて指数を定め、それを自動化されたアルゴリズムによって加算して論文の評価値を算出します。

この数値は目安であり、加算の際には、例えばNewsサイトでは世界的に有名な全国紙と地方紙では数値が異なるなど、さまざまな条件が加味されます。SNSでは不正な書き込みをカウントしないように、例えばTwitterでは、フォロワーの数や発信頻度によっても数値が変わり、同じ人が何度も同じ論文についてツイートしている場合は数値が下がる、Wikipediaへの引用は、1度目は3ポイント付きますが2度目以降ポイントが付かないなど、評価値の不当な操作を防ぐ対策もとられています。

altmetricsの調べ方

altmetrics は、Ceek.jp Altmetrics 、PLoS 、ImpactStoryなどさまざまな機関が独自のaltmetricsを集計しています。
中でも代表格でもあるAltmetric.comは、さまざまなデータベースでも採用されています。論文を検索する際、論文タイトルの下や論文情報の下などに虹色のドーナツのようなマークのアイコンを目にした方もいるでしょう。これがAltmetric.comの提示するaltmetricsです。数字は、上記の計算方法により算出された合計で、ネット上での反響の大きさを示します。

Altmetric.com のaltmetrics を使用していないサイトもあり、論文検索時は常にaltmetricsを調べたいという方もいらっしゃるかもしれません。そういった場合は、Chrome、Firefox、Safari などのブラウザにaltmetricsのブックマークレットを付けることで簡単にaltmetricsを表示させることができます。
やり方は簡単です。

①まずは、以下のサイトから、名前やメールアドレス、所属団体など必要事項を入力して、「get the bookmarklet」ボタンをクリックします。
https://www.altmetric.com/products/free-tools/bookmarklet/#prettyPhoto
②すると、「Altmetric it」のボタンが表示されるので、それをブックマークバーに、ドラック・ドロップします。
③対象となる論文のページをアクセスした際に、このAltmetricのブックマークバーをクリックすると、ページの右側にaltmetricsが表示されます。altmetricsをクリックすると、さらに詳しいSummaryページが開くようになっています。

aitmetics サマリ1

altmetricsの見方と目安

Summaryページでは、数値についての詳細情報や国別の注目度などがわかるほか、「News」「Blogs」「Twitter」など、論文を取り上げたサイトがカテゴリー別に表示され、元サイトにリンクしています。ポイントが付いている全論文の上位何%に入っているか、またジャーナル内の全論文の中での順位もわかります。

altmetric サマリ2

数値の目安は、一般的には10以上あれば良い方で、注目を集めた記事は1,000以上となり、示される数値にはかなりの幅があります。Altmetric.comが毎年発表している「Altmetric Top 100」の数値を参照すると、2019年の1位は13,557、100位でも2,334と文字通り桁違いの数字です。(参照元:https://www.altmetric.com/top100/2019/

注意したいaltmetricsのデメリット

altmetricsは多くのメリットがある一方、デメリットや不完全性も指摘されています。主なデメリットは、以下のようなものです。
・新聞やテレビなどのマスメディアは含まれず、基準が偏っている
・一般受けしやすい記事の反響が高くなり、商業的になるリスクがある
・SNSの発言者の属性や目的・動機が明確にできない
・SNSの発信によるデータの操作が容易である

これらのデメリットのほか、注意しなければならない点は「altmetricsは論文の注目度を測るものであり、論文の質を測るものではない」ということです。

altmetrics以外にも活用できる研究評価指標

altmetrics以外に現在用いられている研究評価指標には、主に以下のようなものがあります。それぞれ長所と短所があり、一つだけで評価を決めることはできません。

・論文数・被引用数
研究者を評価する最も基本的な指標です。ただ、論文ごとに被引用数には差があり、被引用数だけでは正確に評価することはできません。

・インパクトファクター
ジャーナルを評価するための指標で、あるジャーナルについて、そこに掲載された論文が一定の期間内に他論文からどれだけ引用されたかを平均的に示す値です。信頼度は非常に高いものの、指標が出るまでに時間がかかること、ジャーナル単位の評価なので各論文の評価まではわからないことなどのデメリットがあります。

・h-index
研究者を評価する指標の一つで、「被引用数がh回以上ある論文がh本以上あるという条件を満たす最大の数値h」と定義されています。研究者の発表した論文の質と量の両方をバランスよく評価できるというメリットがありますが、被引用数の絶対数がわからないこと、研究期間の長さによって自然に数値が上がってしまうことなどのデメリットがあります。

・相対引用率(RCR)
論文を評価する指標の一つで、ある論文が引用された場において同論文内で引用された他の論文もチェックすることで被引用数に対して分野の正規化(field-normalization)を行い、論文の影響度を測定する方法です。その過程でさまざまな要素を取り込むことで評価の尺度が改善され、異なる分野にも適用ができるという点で優れています。その一方で、あまりに複雑なうえに制約が多く、分野によっては向かない指標であるなどのデメリットが指摘されています。

altmetricsは従来の指標に欠けていた即時性や社会性をもたらし、古く伝統的な論文評価のシステムに大きな一石を投じました。とはいえ、altmetricsにも多くの課題やリスクがあります。有用な指標の一つとして、ほかの指標と補完し合いながら活用することが大切です。

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